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一万打に何も祝えてなかったので、二万打にあわせて投下させていただきます。
こうやってサイトが続けられるのも、見に来てくださる方がいてこそだと思っております。
本当に感謝しています。

続きから記念のキラペンフリー小説になります。
雰囲気的にR15くらい?でキラーが変態なのでそういうのがOKな方のみどうぞ。

 





「今は会えない。ごめん、だって」
「・・・」

久々に恋人の生活する船にやってきたキラーにかけられた最初の言葉がこれだった。
いつもなら茶化しながらも居場所を教えてくれるはずのキャスケットは、海を眺めて苦笑しながら言葉を続ける。

現在の島に到着する少し前、海上で海軍との抗戦があった。
かなりの数の多さを相手に苦戦を強いられていた時、敵線のマストの上からライフル銃を構える海兵を発見したペンギンは、狙われていたローを庇って盾となり、被弾してしまったのだそうだ。
その後なんとか海軍を振り切ったはいいものの、ペンギンは体内に残っていた弾を摘出する手術をうけることになった。普段は船内での医療行為を船医のカゲロウに任せっきりのローだが、今回ばかりは自分で全て作業を行ったらしい。
しかも怒りながら、である。

「オペが終わった後もずーっと機嫌悪くてさ。怖いのなんのって・・・」
「・・・奴らしいな。」

己を庇って傷ついた部下に延々と説教をするローの姿を想像してキラーもふっと笑った。
そういえば自分も同じようなことをしてキッドを不機嫌にしてしまったことがあるのを思い出す。

「んで、ペンギンは船長命令で傷がふさがるまでベットから出るなって言われてんだ」
「それで会えない、と?」
「まぁそれもあるだろうけど・・・やっぱアレじゃん?好きな奴に弱った姿なんか見せてたまるかってやつじゃない?ペンギンって妙なとこで意地はっちゃうからさ」
「・・・違いない」

他の男ならいざ知らず、ペンギンという男にかぎって、そんなことはプライドが許さないだろう。
会えないのは寂しいが、ここは大人しく帰ろうか、とキラーが歩きだそうとしたその時、船内へ続く扉が開いた。

「あれ?殺戮武人来てるよ。ロー」
「・・・・・・。」

出てきたのは先ほどまで話題に上がっていたこの船の船長、トラファルガー・ローと、船医のカゲロウだった。
ローはいつものトレードマークの帽子は被っておらず、かわりに白衣を羽織っていた。
そして、キャスケットに聞かされた通りのしかめっ面をしている。心なしか目元のクマも濃くなっており、いつもより迫力がある。

「キラー屋・・・来てたのか」
「まぁな」
「あのバカなら今日は会わせねぇぞ?」
「話は聞いた。もう帰る」
「えー帰んの?もったいない」

横やりを入れてきたカゲロウに「会えなければここにいる意味もないだろう?」と話せば、何かを考えるそぶりを見せ、しばらくすると、ぽんっと手を叩いた。

「会えばいいじゃん。ペンギンとさ」
「え・・・?」
「テメェ話聞いてたのか?俺が会わせねぇつってんだから・・・」
「ロー。ちょっとちょっと」

耳貸して、とカゲロウは内緒話をするようにローに耳打ちする。
暫く不機嫌そうにへの字になっていたローの口がだんだんと笑んでいく。

「ぜってぇろくでもないこと考えてる・・・何かある前に帰った方がいいよ?」
「いや、でも・・・」

キャスケットの警告はもっともだったが、もしかしたらペンギンに会えるかもしれないという期待が膨らんでしまい、キラーはその場を動けずにいた。
暫くすると、ローだけその場を離れ、船内へと来た道を戻っていく。

「なーに企んでんだ?カゲロウ」
「べっつにー?ただ我らが船長さんの機嫌が良くなるようにおもしろい提案をしてあげただけだよ♪」
「おもしろいって・・・けが人で遊ぶなよ。悪趣味だなぁ」
「ペンギン一人の犠牲で船が平和になるならいいじゃん」
「ほんと最低だなオマエ」
「お褒めに与り光栄です」

ジト目で睨むキャスケットに楽しげに笑みを返す男に、キラーもため息をつく。
キラー自身、カゲロウのことはあまり知らないが、酒の席でペンギンにさんざん愚痴を聞かされているため、あまり良い印象は持っていない。

「それにさ、ペンギンだってせっかくの機会なんだし、会えなきゃそれなりに悲しいでしょ?」
「そりゃ、まぁ・・・そうかもだけど」
「だからさ、どんな形であれ、会わせてあげたいと俺は思うわけ。ね?ホラ俺やっさし~ぃ」
「最後の一言でイラっときた。」

どんな形であれ。
ペンギンも会いたいと思ってくれるのだろうか?
一方的な口論を続ける二人を後目に、キラーは愛しい恋人に思いを馳せていた。
暫くすると、再び船の扉が開き、ローが現れた。
右手には先程までなかった愛用の刀が握られている。
そして左手には・・・

「ほらよ。キラー屋。ペンギンだ」
「・・・・・・・・・・・・」

ペンギンの右腕が握られていた。

「って、ちょっと待って船長!なにやってんスか!!」
「なにってペンギンつれて来てやったんだろうが。腕だけな」
「オペ以外で船員に能力使わないでください!!」
「固いこと言うなよキャス・・・ほらよキラー屋。」
「!」

己に向けて投げられたペンギンの片腕を受け取る。
ローの能力で生きたまま切断された腕の温かさに違和感を覚える。
肩のあたりで切られた切断面に思わず触れてみるが、己が敵を切りつけた時によく見るような切断面とは違っていた。
ぴくりと動く指先と、死体とは違った体温が、この腕とペンギン本人の神経がまだ繋がっていることを知らせていた。

「おいトラファルガー、なんのつもりだ?」
「貸してやる」
「は・・・?」
「本体は貸せねぇが、まぁ片腕くらいなら一日貸しといてやるよ」

まるで物の貸し借りのように軽く言う男に少し腹が立ったが、男にとっては船も船員も全てが自分の所有物なのだろう。ここにいる二人も、もちろんペンギンもそれを理解しているだろう。この男はそういう人間だから。
さしずめこれも、勝手に身を呈して自分を守ったことに対する仕返しと、少しの礼のつもりなのだろう。
だが、ただの気まぐれで部下の腕を切り落としてそれをその恋人に貸す、というのは正直、人としてどうなんだ?とキラーは仮面の上から眉間を押さえた。

「あとペンギンから伝言だ」
「ん?」
「“変なことしたらブッ殺す”だとよ。」
「・・・・・・・・・承知した。」

この言葉から察するに、無理矢理腕を切られたわけでもないのだろう。多少この男が強引だったとしても、ペンギンが俺に腕を貸すことを了承したということだ。
ペンギンが了承しているのならば、これは俺が持ち帰ってもいいのだろう。そう見当をつけたキラーは、ペンギンの腕を持ち帰ることにした。





「さて・・・どうするか」

キッド海賊団の自室に戻ったキラーは、とりあえずベットの上に腕を置いたはいいものの、これから何をするべきかわからなかった。
ここにペンギン本人がいたとすれば、珈琲をいれるなり話を聞くなりできるが、あいにく今は腕が一本だけだ。
そう考えているうちに、腕は自分の居場所を確かめるように肘を伸ばしてベットのシーツにがさがさと触れ始めた。見えないところに自分の体の一部があるのが不安なのだろうか?とキラーは考える。
何せ体験したことない行為のため(当たり前だが)どう扱えばいいのかもわからないのだ。
少し考えて、キラーはペンギンの手に触れた。
びくりと大げさにゆれた指を安心させるようにゆっくりと撫で、掌を返す。
手の甲に片手を沿え、掌にゆっくりと大きく指で文字を書いていく。

 ぺ ん ぎ ん

すると、ペンギンの手がもぞりと動き、手を反転させると、先程まで手をつかんでいたキラーの手を探りながら、掌に『な ん だ』と短い言葉を指で文字を書いてきた。

「片腕でもペンギンはペンギンだな」

普段と変わらないぶっきらぼうな反応に笑っていると、その振動が伝わったのか、手をつねられた。「ごめんごめん」と聞こえるわけもないのに謝って手を慈しむように撫でると、少し安心したのか、指をやわらく握られた。
キラーもそれを握り返し、暫くそうやって手で触れ合うだけの時間が続いた。
手をつないだり、指と指をからめてみたり、マッサージしてみたり。
過剰なスキンシップを嫌うペンギンにしては珍しく積極的で、キラーは少しドキドキしていた。
今ペンギンはどんな表情をしているのか、考えるだけでも楽しかった。
ペンギンの手は冷たくて白くて、腕もすらりと長い。普段からツナギを着ているため、日焼けもなく、なめらかな肌をしていた。

「ん?」

腕をまじまじと見ていたキラーは、腕に残る小さな傷痕を発見する。
ナイフか、もしくは矢か。刃か何かが腕をかすめた時につく傷だ。傷は完治しているようだが、赤く痕がのこってしまっていた。
真っ白な肌に残る赤い痕を見ていると、つい邪な感情が浮上して、キラーは無意識に己の唇を舐める。
きゅっと手を握り、やんわりと腕を掴むと、キラーはその傷に唇を押し当てた。
途端に暴れだそうとする腕。だが、先に掴まれていたためろくな抵抗もできない。
そもそも腕一本でこの男相手に抵抗しようなんてこと自体無駄なことなのだ。
二度、三度とキスをして、舌を這わせる。
ぴちゃり、という水音が静かな室内に響く。
腕は抵抗を忘れ、震えていた。それは何をされるかわからない恐怖なのだろうか。それとも・・・

『あぁ・・・またペンギンに怒られるんだろうな』

なんてことを頭の片隅で考えながら、キラーは腕に舌を這わせる。
片腕相手にこんなことをしているという背徳感に、いつもより興奮を覚えていることにキラー自身気付いていない。
髪を掴んでこようとする指を動けないように握りこみ、反らせた手首にキスを落とす。
微かにかかる吐息にすら敏感に察するのか、指がびくりと大げさに動く。
それがたまらなく可愛く見えて、掌にもキスをすると、拘束していた手を振りほどいた指が、がしっと顔を掴み、頬を思い切りつねられた。

「いいい痛い痛い!ごめんってば!」

片腕になっても凶暴な恋人に謝るも、許してはくれないようで、さらに指の力が強くなっていく。結局、頬が千切れるんじゃないかというほどつねられ、真っ赤に晴れ上がってしまった。
オマケに指で『ば か』と書かれる始末に、キラーは本気で落ち込みそうになったが、疲れて力の抜けた手が肩に触れ、まるで身体をあずけるように腕があずけられたことに、少し安堵した。
その腕をキラーは優しく抱き締めながら、届くはずのない愛を囁く

「あぁ、やっぱり俺・・・ペンギンが好きだ」

聞こえるはずがないのに、肩を掴む指に力がこめられていくのを感じて、キラーは微笑んだ。










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後キラーが腕フェチになったとかならないとか(笑)
本当はもっとお礼文っぽく二人をイチャラブさせて告白で〆めようとしたんですが・・・
うん。自重しなかった結果がコレだよねwww当家キラーはいつもどうりの通常運転で今年も参ります。

あと余談ですが、ラノベばかり読んでる私が唯一文学で大好きな作品が川端○成の『片腕』だったりします。なかなかシュールで奇抜な内容なんですが、最初に読んだ中学生の当時はなんだかドキドキしてしまったのを覚えています。思えばあの頃から私の手フェチが始まったんだと思います。

なにはともあれ・・・一万打ヒットありがとうございました!!
こちらはフリー小説になりますので、ご自由にお持ち帰りください。
無断でもおkですが、持ち帰る前に一言頂けるとトキガネが調子に乗ります(笑)
それではお次は二万打!書いてまいりまーす^^








 
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