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キラペン小話。付き合い始めの二人。
ぎこちないくせにラブラブしやがってむかつく(笑)


 


「ペンギンペンギーン!」
「なんだ?ベポ」

船内設備の点検を終え、部屋に戻ろうとしていたペンギンは、名を呼ばれて後ろを振り返った。そこには大好物のアイス片手に上機嫌でのしのし歩いてくるベポがいた。

「みてみて!チョコミントアイス!」
「なんだ?自分で買って来たのか?」

今日は買出し係は出かけていないため、そう見当をつけてペンギンは言ったのだが、ベポから返ってきた答えに思考を停止させるハメになる。

「さっき殺戮武人が来て『これやるからペンギン呼んできてくれ』って頼まれたんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

いったい何秒たっただろうか?いつも以上に無口なペンギンにベポが「どしたの?」や「おーい?」と話しかけ、目の前でぶらぶらと手をふってもペンギンは無反応だった。どうしたんだろう?とベポが防寒帽で隠れた表情を覗き込もうとすると、それを阻むようにペンギンは帽子のつばに触れ、深く被りなおす仕草をした。

「・・・で?そいつは今どこに?」
「えっと・・・談話室に案内しといたよ。船の外で待つって言ってたけど・・・」
「ご苦労だった。明日は俺がアイスを奢ってやろう」
「え!ホント!?」
「あぁ。だから誰にもこのことは言うな。」
「アイアイ!」

元気よく返事したベポに満足したのか、ペンギンの口元は笑んでいた。
そして談話室に向かうべく踵をかえし、カツカツと船内の廊下を進んでいく。
平静を装ってはいるが、その足取りはどこか軽く、そして競歩のように早い。
それでも走らないあたり、流石は『船内は走らない』の標語を貼った張本人といえるだろう。
数秒もしないうちにたどりついた談話室の扉を開いたペンギンの目に映ったのは、つい最近思いを確かめ合った愛おしい相手だった。

「悪いな。連絡もなしに来て。」
「・・・いや。構わない。」

いつものように平然とした顔のペンギンだったが、ソファで本を読んでいたキラーが己に視線を向けた瞬間、少しだけ表情を綻ばせた。
キラーは仮面こそ外していたが、表情に変化はない。だが、その雰囲気で相手も喜んでくれているとペンギンには判った。
判ったはいいが、それ故に己も相手を意識していることに気付いてしまったペンギンは、また帽子のつばに触れた。

「今日はどうした?」
「前に借りた本を返しにな。」

ほら、と数日前に貸した本を差し出され、ペンギンはキラーに歩み寄ってそれを受け取ろうと手を伸ばした。
その手に、キラーの空いていた片手が触れる。
ペンギンが驚いたその一瞬のうちに、細い手首を掴まれ、強く引っ張られる。
体勢を崩したペンギンは、ソファに座るキラーに抱きかかえられるような形で着地した。

「キ、ラー・・・?」

キラーは丁度ペンギンの腹のあたりに顔をうずめ、がっしりと腰に抱きついていた。
まるで子供が親に甘えるようなその体勢に愛しさがこみ上げたペンギンは、少し躊躇ったあと、ふわふわとした金糸の髪に触れた。『まるで大きな野良猫だな』とペンギンは思ったが、口には出さなかった。
今はこの心地良い時間をゆっくり味わっていたい。それはキラーも同じなのか、一言も発することなく、ペンギンを抱き寄せ、時折くすぐったそうにツナギに額を擦り付けている。

「もう少し、このままでもいいか?」

そう躊躇いがちに聞いてくるキラーに「あぁ」と呟けば、見上げる体勢のキラーの顔には笑みが浮かんでいた。

「何故だろう・・・触れていると落ち着くんだ」
「・・・そう、か。」
「赤くなってるぞ」
「っ!?み、見るな!」
「はいはい。」

くすくすと笑うキラーの頭を押さえつけるように、ペンギンもキラーの頭を抱き寄せた。
自分よりも少し高い体温が伝わり、幸せなような、眠たいような、そんな気持ちになった。
今まで幸せなら幸せなぶんだけ、その反動に帰って来る不幸を思って息苦しいこともあったが、今この時感じている幸福感は、そんなことは微塵も感じさせないほど、温かくペンギンを包み込んでいた。
数日前までは考えられなかった、この関係と、この気持ちを、ペンギンは今更ながら強く感じていた。

「キラー・・・」
「?・・・なんだ?」
「・・・・・・・・・いや、なんでもない。」
「?」

言葉にしようとすれば、途端に恥ずかしくなって、その先は言えなかった。
いつか伝えることができるだろうか?
お前が俺を好きになってくれたことが、こんなにも幸せなんだということを・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このバカップルめが!www
と叫びたくなるようなペンギン乙女っぷりにびっくりです。
違うんだ・・・奴は本当はクールでマジメで・・・うん。結構ヘタレ男子だったかも。ごめんなさい(笑)
 
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