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本誌の展開が劇的すぎるので(笑)カゲロウの話投下ですwww
世の中には色んな愛の形がありますが、根っこにある気持ちは同じだといいな。


 


「う~ん・・・・・・」

円形に切り取られた視界の向こうに、土煙が舞っている。
かすかに感じる地響きと、刃が擦りあわさる金属音。
時折聞こえる、悲鳴と怒号。

切り離された世界に見えるそれを、俺は一人、甲板の上から、眺めていた。
船をつけている島の湾内から少し離れた町の中に見える、海賊同士の闘争を、眺めていた。
敵が味方が倒れていくのを、白い繋ぎを着た影が、血の赤に塗れて倒れてゆくのを、敵の船長めがけて刃を振りかざすローの姿を、眺めていた。


眺めているだけだった。


「劣勢だねぇ。どうも・・・」

その刃は寸でのところで敵の拳銃によって横殴りに軌道を逸らされ、バランスを崩したローの側頭部に蹴りが炸裂する。
細い体が、一瞬だけ宙を舞う。
吹っ飛んだ気に入りの帽子が地についた。
テメェはここで終わる、と、男の唇が動いた。
ローは意識を飛ばしているのか、それとも反応を返せないだけなのか、仰向けのまま、ただ男を見上げていた。
男の右足が、ローのパーカーに描かれたジョリーロジャーをぎりりと踏みにじる。
ローは息と一緒に赤い血を吐き出した。
何か話しているようだが、こちらからは男の背しか見えなかった。
見えているのは、口から鼻から血を流すローの横顔と、その顔に狙いを定める拳銃の鈍い光。

「・・・・・・。」

俺はそれを眺める。眺めるだけ。
それ以外何もしない。できないではなく、したくないだけだった。
俺が決めたことだったからだ。
体の震えも、鼓動の高まりも、一切感じない。
ただ静かに、その時を向かえる覚悟はあった。

ガゥン・・・と、轟音が響き渡った。

銃口から細い煙が上がる。
男が手にしているものではない。ペンギンが、敵からうばった銃を撃ったからだった。
男が胸からハデに血を噴出しながら崩れるようにローの隣へ倒れこんだ。
ペンギンは暫く銃を構えた体勢のまま、肩で荒く呼吸を繰り返していたけれど、そのうち糸が切れたように地に伏せた。





やがて、硝煙の昇る空から一つ二つと雨粒が落ちてきた。
それはやがて激しくなり、土煙が晴れて、代わりに雨で視界がけぶった。
それでも俺が、彼らを見失うことなんてないんだけど。

「や。気分はどう?」
「・・・サイッテーだな。負けた上に、この体じゃしばらく動けねぇ」
「負けてないデショ?」
「負けたさ。俺がトドメをさせなかったんだ。俺の負けだ。」
「生きてたら勝ちでいいじゃん。」
「そんなお気楽なこと考えてたら、海賊旗なんかかかげてねぇよ」
「あっそ。」

無数に転がる死体と、傷を庇いながら立ち上がる白いツナギの仲間。
今にも死にそうになりながら、近くに倒れていたペンギンににじり寄るキャスケット。
白い毛並みをかきわけて傷を舐めるベポ。

みんなみんな無事だ。
みんなみんな死に損ないだ。

「俺が墓守になるのはいつになるんだろうねぇ」
「さぁな。当分先だろ?」
「だといいけどね。」
「くだらねぇ」
「うん。くだらない。でも本気だ。冗談でもなんでもない。ただの本心だ。」

生きたいように生きて、死ぬなら死ねばいい。
俺はそれを見届けるためにいるんだから。
行き着く先に訪れるもの。誰にでも、どんなものにも約束された終わりの瞬間を。
死なず、壊れず、狂わずに。

「今もこれからもその先も。俺はセンチョーの傍にいるよ」

そう言って笑った。
「気持ち悪ィな」と、ローも笑った。

軽症だった仲間が、次々とローの周囲に集まる。ペンギンに肩をかしたキャスケットもよたよたとやってきた。一番にかけつけたベポがわたわたとしてローに言葉をかける。
俺が、俺としての会話はここまで。

「ベポ。みんな。風邪ひかないうちに船に戻ろうよ。傷も処置しないと、皆死んじゃうよ?」
「逆!順序逆だよ!風邪ひく前に死んじゃう!!」
「あはは~それもそっか。んじゃ、重症のやつから船に運び入れてね~俺は先に準備しに行くから。」
「っつーかカゲロウ!船に長距離用ライフルあるって言っただろ!援護ぐらいしろ!」
「そんなこと言ってもさーキャス?いくら俺がなんでもできるパーフェクトでスペシャルな奴でもね?あんなでかいの打ったら肩ぬけちゃうよ?」
「そうか。それじゃあ今度俺がじきじきに打ち方を教えてやろう。お前の頭マトしてな。」
「丁重にお断りするよ。ペンギンの訓練厳しいから。それに・・・



俺はまだ生きてたいしね。」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カゲロウは愛しても恋はしないと思っています。
恋慕の情とか持ち合わせていなさそう・・・変な奴ですねぇホントに。
 
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