どこにもたどりつかない。 二人の素顔06 忍者ブログ
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キラペン続き物。完結編。
キラー視点です。
連作はここでおしまい!今後は恋人同士になった二人を書いていきたいと思います^^


 


仮面を日常的につけていると、わかることがある。
表情をまったく見せない、感じさせない仮面に、人は少なからず恐怖を抱くということ。
笑っているように見えて疑っていたり、楽しんでいるように見えて警戒していたり。
素顔でいるのに、その裏の感情は似て非なるものばかりだった。

そうやって、誰しもが自分と他人の間に線を引いている。
仮面をかぶっていない人間などこの世に一人もいない。
ただ一人、キッドは違った。
キッドの素顔の裏は常に表と同じだったし、誰がどう線を引こうと、問答無用で踏み越えてくるような男だった。
粗野で乱暴で、そしてとても純粋な力に満ち溢れていた。
俺が最初に心奪われたのは、そんな男だった。

では、二度目の彼は?



ベットの端に腰掛けていると、窓から明け方の白みはじめた空が見えた。
日が昇らないうちに帰らなければ仲間も心配するだろう。
仮面も部屋に置きっぱなしになっている。
けれど、俺はそこから動けないでいた。

「・・・・・・・・・。」

そっと後ろを振り返る。
そこには、静かな寝息をたてて眠るペンギンがいた。
壁に顔を向けているため、その表情は見えないが、きっと穏やかな顔をしているんだろう。

事後処理を丁寧に施し、布団をかけてやってもペンギンは眠れずにいた。
人が近くにいると眠れない体質なのだろう。微かな物音一つでペンギンは目を覚ましてしまう。疲弊した身体を休めてやりたくて早々に帰ろうとしが、それは俺の袖をひくペンギンの手によって阻まれた。

『もう少しだけでいい。いてくれ。』

少し擦れたような声に制され、俺はもう1時間以上このままだ。

「・・・・・・・・・。」

一瞬、ペンギンの柔らかそうな髪に触れたいと思った。
俺は、今一度考えてみた。


どうして俺は、ペンギンにこんなにも惹かれたのだろうか?


最初に会った時の印象は、『裏がわからない奴』だった。
元々の性格が無口な上、仲間と認識するもの以外、形式上の会話しかしなかった。
引き結ばれた口元や、目深に被った防寒帽のせいで表情は見えず、わずかな隙もみせない。
無表情で塗り固められた仮面の下に、いったいどんな人間がいるのか?
そんな興味が湧いたのは、キッドとローが恋仲になり、俺とペンギンも二人で会う機会が増えた頃だった。

警戒が解けた後の変化は劇的なもので、ペンギンは色んな表情を俺に見せた。
ペンギンが時折零れるように笑い、怒り、呆れる顔は見ていて面白かったし、彼がどれだけ仲間や船長のことを大切に思っているかも理解できた。
相変わらず無口で、二人で何時間も無言で過ごすことも幾度と無くあったけれど、それすら俺には心地良かった。

その頃からようやっと、ペンギンの仮面の下が見えてきた。
非情に徹しようと、必死になって表を取り繕う、優しい男。
己の心が誰にも犯されぬように、分厚い壁を何枚もはっている、不器用な男。
そのくせ愛に飢えていて、仲間を愛することで自分の虚しい心を慰めているような、そんな・・・



「ペンギン・・・」
「・・・・・・・・・。」
「ペンギン、そのまま聞いてくれ。」

部屋を優しく照らす外の光に目を細めた。

「俺は・・・・・・・・・お前が好きだ。」

海の水面に反射した光が窓に映って、無数の光の欠片がゆらゆらと輝いている。

「この気持ちのせいでお前が傷つくことも、こんな関係を望んでいなかったのも知っている。」

ゆらゆら、ゆらゆらと

「それでも、どうしても伝えたかった。・・・触れたかったんだ。」

空が朝焼けのオレンジにゆっくり染まっていくのを、ぼぉっと眺める。
胸が焼きつくように痛くなって、言葉に詰まった。

「俺は・・・俺は、お前に何もしてやれないし、お前のために命をかけることもできない。でも、お前を好きな、この気持ちだけは・・・本当だ。」

『いずれ敵として戦うことになるなんて、思いたくもない』

穏やかな寝息はもうしない。
代わりに、涙を堪えるようなしゃくり声が、ひっそりと聞こえた。

「でも・・・もし・・・・・・もし、お前が、俺と同じ気持ちなら・・・」

その先の言葉は、突然伸びてきた手によってうやむやになる。
布団を蹴り飛ばしたペンギンが後ろから抱きついた結果だった。
少しだけ振り返る。
金の髪に埋もれたペンギンの顔は見えなかった。
けれど、確かに聞こえたペンギンの震える声に、涙が出そうだった。

「俺も・・・好きだ・・・・・・っ」

水平線のむこうから顔を出した朝日が、部屋を明るく照らす。
新しい日々が始まろうとしていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おわっっったぁああああ!!!!\(^o^)/
最終話はやはり難産でしたwwwでも二人とも思いが通じ合うところまでちゃんと書けて満足です^^ドロッドロに甘い恋愛ものも好きなんですが、痛みを伴う恋愛の方が絆がより強くなっていくような気がするので、この二人の関係は大好きです。
全部捏造ではあるけど、二人には幸せになってほしいな。
 
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