どこにもたどりつかない。 戯れの決闘02 忍者ブログ
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キラペン決闘連載。
ペンギンの衝撃の過去とは!?・・・とかアオリっぽくしてみる(笑)





その夜、俺は船の機関部の整備のため酒の席を外していた。
島のログ自体はそう早く貯まる島ではなかったが、入った町がたまたま機械技術と造船技術に発達した島だったため、これ幸いとばかりに新しい部品や予備のパーツを買いまくってしまった結果、停泊初日から船の見張りの奴等と一緒に船にいることになっちまった。
・・・まぁ自業自得なとこもあるからいいけどな。
そう思っていた矢先、深夜を過ぎた時間になって外に出たはずのキャスがひょっこり機関室に顔を出した。緊急の用事でもあるのか?と訊ねた俺に、奴はニヤリと笑って答えた。

「今から面白いこと始まるんだけど、バンもどう?」






そして連れてこられたのが、この即席コロシアムなワケだ。
観客席もねぇ深夜の港にずらりと並ぶ白いシルエットの壁の一部に参加することになった俺は、隣に立つキャスケットにこれから何が始まるのか問いかけた。
なんの説明もなしにここまで連れてこられてみれば、我等が副船長サンと殺戮武人と名高い懸賞金一億超えの海賊(よくはしらねぇけどこの二人は恋人関係らしい)が背中合わせで互いの船員の見つめる中、立ち尽くしている。
異様とも言えるこの光景を見てなんとも思わないバカはいねぇだろう。

「決闘だよ。どっちが強いか勝負してみるんだってさ」
「なんだぁ?賭けでもしてんのか?」
「うん。船長たちがね」

ほら、とキャスが指差した先には、造船所の屋根に座る人影が二つあった。
フィールド全体を見下ろすことのできる特等席ってわけか。

「バンはどっち勝つと思う?」
「ん~・・・まぁ賞金額からいけば殺戮武人なんじゃねぇの?」
「そこは仲間としてペンギンって言ってあげなよ」
「そうはいいてぇけどなぁ・・・俺ぁペンギンが戦ってるとこなんざ数えるくらいしか見たことねぇんだよ」

普段から後方支援に回ることが多い俺とペンギンは、好戦的なキャスとは違い、やらなくていい戦いはしないタイプだ。海上での白兵戦だと、俺は機関室で指揮をとらなければならないため外には出ない。
ペンギンの戦闘も雑魚を相手にしているところしか見たことがないのだ。

「あ、そっか。じゃあバンって、ペンギンの本気戦闘初観戦?」
「まぁな。お手並み拝見させてもらおうか」

パンッと乾いた銃声が辺りに鳴り響く。
ペンギンとキラーは一歩、二歩、と足を進める。

「驚くよ~?なにせペンギンって」

三歩、四歩・・・


「超ぉ強いから」





キィンッッ・・・と、金属のすりあう音が聞こえた。

五歩目を二人が踏み込んだと思った次の瞬間には、離れていた距離は一気に縮まっていた。
キラーの右腕に装着された鎌上の刃と、ペンギンが眼前に突き出した左腕。
完全に一撃が入ったと、その光景を見たものなら誰もが思うだろうが、響き渡った金属音がそれを否定していた。

『ガントレットか・・・!?』

一瞬の混乱。そのスキを狙い、ペンギンは刃を受けた腕を振り払い、仮面からは見えにくい側面に大きく蹴りを入れた。
突然のことに脳より先に動いたキラーの腕がそれを受け止めるが、勢いは殺しきれず、吹っ飛ばされる。いくらか離れたところでキラーは一度片足をつき、ジャンプ。空中にくるりと舞う金髪に、蹴りの体勢のままだったペンギンはにやりと笑い、走り出した。
勢いを殺して地面に足をつけたところに、ペンギンが容赦なく襲い掛かる。
だがキラーも攻撃の早さならばペンギンに負けてはおらず、互いに一進一退の攻防を繰り広げていた。





「なんだってんだ・・・?」

そう漏らした俺の声に気づいたのか、隣に立つキャスケットが「ね?強いっしょ?」と笑っていた。

「確かに強ェ・・・けどな、ありゃ何だ?」
「なにって?」
「あいつの身体・・・どうなってるんだ」

キラーの刃を受け止める腕、白刃取りする指先、今なんて掌で受け止めやがった。
もちろんペンギンは服の下に鉄板を仕込むようなことはしていない・・・はずだ。
その証拠に、裂けた服の下には日焼けのない白い腕が見えてしまっている。

「ん~・・・俺もよくは知らないんだけどさ、“六式”とかゆうの使えるんだって。」
「ロクシキ・・・?」

聞き覚えのない言葉に首をかしげる。

「海軍にいた頃に上司から教わったらしいよ。」
「なっ!?海軍だと!?」

突然知ることになってしまった衝撃の事実に、口にした張本人に視線を向ける。
舞うように戦闘を続ける二人を見つめるキャスケットの横顔があった。
今は夜だが他の海賊団の手前のため、サングラスはかけたままだ。

「かなりエリートだったみたいでさ~。けっこう若い頃からいたんだってさ。・・・結局、追われる身になって終わったらしいけどね」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「それが今じゃ、海賊船の副船長なんてもんやってんだから・・・運命なんてわかんないもんだよね」

そう皮肉っぽく笑うキャスケットの表情に促されるように、その視線の先へと俺も意識を集中させることにした。
あまり人の過去を掘り下げて聞くもんでもないしな。






また腕で刃を防がれた。
鍔迫り合いを行うかのような鉄の感触に、キラーは一つの答えにたどり着いた。

「“鉄魂”・・・か」
「なんだ。もうバレたのか?」

つまらんな。とペンギンがひとりごちる。見た目に反して、と言えば失礼かもしれないが、キラーもここまで生き残ってきた海賊の一人だ。
政府の手の者や海軍の上官クラスを相手にしているならば、知っていて当然かもしれない。
ペンギンはがら空きになっているキラーの突き出された腕へ向かって、空いている左手を持って行く。そして人差し指と親指をたたせ、ゴム鉄砲でも打つような姿勢に、何をするのか気づいたキラーは、咄嗟に身を翻そうとしたが、すでに遅かった。

「“指銃”」

バンッと辺りに響く破裂音。それは先ほどまでの金属が擦りあう高い音ではなく、空気を割るような音と、己の身体に銃弾が命中した時に聞く肉の裂ける音だった。

「くっ・・・!」

一足遅れてキラーの刃が、避けたペンギンの頭上を切った。
バック転を繰り返し、後退したキラーは余裕の表情だ。

「首を狙うな。危ないだろうが」
「戦闘に危ないも何もないだろう?そっちこそ、片腕折るつもりできたくせに」
「まぁな。これくらいしなけりゃ、お前に勝てないだろう?」
「・・・違いない。」

もう少し遅ければ、腕がありえない方向に曲がってしまっていただろう。
肉が抉られただけで済んだのが奇跡だった。

「で?ペンギンはいくつ使えるんだ?」

全部で六つあるといわれている体技のうちの二つを見せたペンギンは、

「さぁ?」

と意地悪く答えるだけに留めた。
知りたいなら引き出してみろよ、と言わんばかりに右手を突き出し、人差し指をちょいちょいと動かすペンギンに、キラーは仮面の下で笑みを濃くした。










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中途半端に三話目につづく!のか!?
うーん・・・エロもそうだけど戦闘シーンって文字じゃ表現しにくいですよね。
漫画とか演劇とかなら、「こうなってこう!」とかニュアンスで伝わるのになぁ

あと、ペンギンの設定が追加されたので、キャラ紹介ページの更新を行いました。
不定期連載になりそうですが、どうぞ生ぬるく見守ってくださいませ^^;

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