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キャスケット視点のジャック×キャスケットな内容。
いつかジャック視点も上げたいです。
捏造設定フル活用ですが、OKの方のみ続きからどうぞ。


 




夕刻。キッド海賊団の船の上で、俺は赤く染まった海を眺めていた。
赤く、といってもサングラス越しじゃあ、全てが曖昧な色に溶けてしまっているけれど。
それでもこの色はわかる。赤く燃える炎と同じ色だ。

「船に戻らないのか?」

声のした方に視線をおくると、傍らに背の高い男が立っていた。
キッド海賊団の中でも一際目立つ、薄い色のドレッド頭に、体中ツギハギのような縫合痕のある男だった。

「使いの用事は済んだんだろう?」

早く帰らなければ仲間が心配するんじゃないか?と眉根を寄せて男は首をかしげた。
顔もおおよそ普通とは言えない男だったが、その仕草がやけに子供っぽくて、見慣れてしまえば気味悪さより愛くるしさの方が増してくると知ったのは、つい最近のこと。

「べっつにー?この船じゃあ誰も心配しないよ。ウチの船長も副船長もしょっちゅう来てるワケだし。」

なんだかんだ言いながら互いに仲の良い船長たちと、周囲に隠しながら(まぁ秘密にできていると思ってるのも当人達だけなんだけど)関係を続けている副船長たち。
今更俺の帰りが遅い程度で何も言われないだろう。
「それはそうだが・・・」と躊躇う男の目の前で、俺は船の縁に足をかけた。

「よ、っと・・・」
「!?」

自分たちの鉄でできた船とは違う、ギシリとした木造船の軋む音が聞こえた。
縁の上を綱渡りの要領でたん、たん、たん、と歩いていく。自分たちの船は鉄のポールでできた手すりしかないため、こういったマネは早々できない。
昔、街で住んでいた頃はよく、建物の間にわたされている洗濯物を干すロープの上を歩いていた。少し懐かしい。

「あ、危ないから早くおりろ!」
「危なくねーよ。心配性だなぁ」

一介の海賊相手に言うセリフじゃないよなぁと呆れながら、少し高くなった視点で男を見る。うーん・・・これでも見下ろす位置にならないとか。
コイツどんだけ背ェ高いんだよ。(そこ!俺が背ェ低いとか余計なこと言わない!)
なんだかちょっとくやしい。

「っつーかアンタさ、何食ったらそんだけデカくなれんの?」
「何って・・・別にこれといって特別なものはないけど・・・」

ひょろりと背ばかり大きいわけではなく、細くしなやかな筋肉のついた体は、筋肉がつきにくい体質の俺としてはかなり羨ましい。

「そんなに見られると・・・その・・・」
「なに?照れちゃうとか?」
「い、いや別に!別に恥ずかしいとかじゃなくてだな!えっと・・・」

慌ててやがんの。なんか可愛いなーこいつ。
船の中じゃあ俺は皆に弄られる側だから、なんか新鮮だった。
だからかな。その時俺はちょっと油断してた。

「気持ち悪いだろ?」

そんな言葉が帰ってくるなんて思わなくて。咄嗟に言葉が出なかった。

「体中こんなで、ツギハギだらけで・・・なんも知らないうちから自分で縫ったりしてたんだけどさ、なかなか自分でやろうと思っても俺…不器用だったから。」
「・・・・・・・・・。」
「キッドの頭に拾われてから、ちゃんと船医に見てもらったんだけど、なんかもうダメっぽくて。この糸、とれないらしいんだ。深く縫込みすぎだって言われたよ。おかげでバケモンみたいな見た目のままだ。」

ははっと笑い話にしようとしているけど、その笑顔が無理矢理作ってるのがバレバレで、なんだか見ていられなかった。昔の自分を見てるようで、痛々しい。

「アンタ、名前は?」
「え?」
「名前だよ名前!教えてくんねぇと呼べねぇじゃん」
「え、えっと・・・ジャ、ジャック」
「よーし。ジャックだな。今覚えた」

俺は帽子を脱ぎ、サングラスを取った。
ジャックの目が見開かれる。その大きな水晶体に、俺の顔が写りこんでいた。
夕日の沈みかけた周囲はまだ明るくて、少し目が痛んだ。

「お前、その目・・・」
「俺の・・・まぁ、親友か?そいつの目を貰った。死体から剥ぎ取って、使い物にならなくなった目と交換したんだよ。」
「そんなことが・・・!?」
「できるさ。うちの船長なら。」
「っ・・・・・・・・・・」
「ジャックさ、そんな見た目でバケモン呼ばわりするのはよくねぇぞ?お前以上のバケモンなんて世の中にはごまんといるんだからさ。」

例えば俺みたいに。とお返しに笑って返してやれば、苦い顔をしていた。
だいたいこいつの見た目はそう悪い方ではない。見た目もだが性格も、だ。俺よりもだいぶできた男だと思う。自分を卑下したい訳じゃないけど、本当にそう思っている。
特に声がいい。落ち着いた大人の声で。けどその口からこぼれるのが子供っぽいいじけた内容ばかりだから笑ってしまう。

「その目・・・本当に見えてるのか?」
「ん?あぁ、見えてはいるよ。ちょっと光に弱いだけ。」

鏡で見ると自分でもわかるけれど、この目は酷く濁った赤色で、およそ使い物にならない。
義眼の方がまだ見える。けれど、もうコレは俺の体の一部になってしまっているから、これでいいと思っている。不便なことも多いけど、船長は完璧な人間よりも、何かしら少し欠けたような奴が好きだから。

「ジャックの髪ってそんな色なんだ?」

きれいだね、と目の前で呆けている男の髪を褒める。
裸眼で見る男の髪は、夕日が沈んだ薄暗い空に映える浅葱色。波打ち際の海の色だ。

「キャスケットの目も、きれいだ。」
「あんがと。・・・なんか照れるな。改めてそんなこと言われると」
「?」

目をそらして頭をかく。
そういえば仲間以外の前でこの目を晒したのは初めてかもしれない。
仲間以外に心を許すなんて!と船長やペンギンに憤りを感じていたちょっと前までの俺からは考えられないな。

「あ。満月」
「本当だ・・・」

だんだんと色を無くしていく空を見上げると、薄い雲の向こうに大きく丸い月があった。
じぃっと見つめていると、光を取り込んだ目の奥がじくじくと痛む。太陽を見た時の痛みとは違う、じんわりと広がるような痛みが少し、心地いい。

「さってと・・・日も沈んだし、もう帰るな。」
「そっか。気をつけてな」
「おう。」

縁から降りて帽子とサングラスを再び身につける。
本格的に暗くなる前に帰らないと。今日は夜に見張りの仕事が入ってるんだ。

「なぁ、キャスケット」
「んー?」

ジャックの前を横切ろうとしたら、不意に呼び止められた。
上からかかった声に顔を上げる。・・・うぅん。やっぱでかいなぁコイツ。

「えっと・・・あー・・・・・・ま、また来いよ。」

しどろもどろに言われたその言葉の真意は見え見えで、少し戸惑う。
コイツ本当に海賊か?こんなわかりやすい奴は初めてだ。
特にウチの船は捻くれ者ばっかりの集団だから尚更かもしんないけど。

「うん。じゃあまた。近いうちにな」

そう返してやれば、傷だらけの顔に笑みがこぼれた。

それから自分の船へと戻る間、ずっと顔が熱くて、わざと遠回りして帰ったことは、俺だけのヒミツだ。










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タイトルは有名な愛の告白の和訳です。
ちょっと前に暇つぶしで書いていたジャッキャス(言いにくい;)をうp。
攻めが純真無垢って・・・イイよね!!ジャックくんには是非頑張ってほしいです。色々とね!ウチのキャスは聡い子なので非常にやりづらいです。
でもそんな奴が純粋な子に絆されていくのって美味しい、とか思ったりwww
原作仕様のはっちゃけキャスも大好きなんですけどね。<おっぱい!おっぱい!

 
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