どこにもたどりつかない。 狂人の喜び 忍者ブログ
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カゲロウ視点でハートメンバーの刺青についての小話。
ついでにキャラ設定ページも更新しておきました。
どうでもいいけどカゲロウとローをカップリング表記にするとカゲローになる(笑)


 


ローは刺青が好きだ。
見るのも彫るのも。もちろん彫られるのも。
俺が最初に会った時には既に両腕との刺青はあったし、指にももちろん『死』が刻まれていた。体を痛めつける行為よりも、何かを刻み付ける行為の方が好きだと聞いたのはごく最近のこと。だから、刺青好きだと聞かされた時に、俺がこれを提案したのは彼にとって間違いじゃなかったはずだ。

「じゃあさ、みんなにも揃いの刺青彫ってあげなよ」

ローは珍しく目を見開いたけど、次の瞬間にはその表情はニヤリとした笑みに変わっていた。
「お前にしてはいい提案だな」と上機嫌に褒められたけど、さっそくどんなデザインにするか考えてくる、と酒の席を離れてしまったから俺はあんまり嬉しくなかった。
突然部屋を出て行ったローに「船長どしたの?」とキャスケットと名付けられた少年が首をかしげる。そのキャスケットに航海術を教えていたペンギンも顔を上げ、俺を睨みつける。「なんでもないよ」と手をひらひらとふって、カラになっていたグラスに酒を注いだ。

今この船の船員はこれで全員。片手にも満たない人数のせいで嵐の夜は小さな船を操作するのも一苦労だ。もっと増やせばいいのに、とも思うけど、ローが気に入るような有能な人間とは早々出会えない。
天候が荒れやすい北の海は寒波にやられて滅ぶ港町も少なくはなかった。今停泊している島も建物はあるが人っ子一人いない。
航路は決まっていても次の島に進むにはこのボロ船では限界があった。

「ねぇペンギン。」
「なんだ?」
「新しい船の資金、どれくらい貯まったの?」
「・・・・・・・・・まだ半分もいってない。」

途端に表情の暗くなったペンギンに、海図を眺めていたキャスケットも「ウチの財政は厳しいねぇ」とぼやいていた。三人揃って溜め息をつく。
ペンギン曰く、出会った時にはすでにこんな状態だったというこの古めかしい帆船は、致命的な故障はないにしろ、そこかしこの壁や床に歪みが出始めていた。医者であるローが買い込んでくる機材や本のせいでそろそろ船の倉庫の床が落ちそうになっている。

「新しい船ほしいよねぇ。広いキッチンつきの。できれば医務室も欲しいなぁ手術台もいい加減欲しいし・・・」
「夜寒くないベットほしー・・・」
「・・・書庫になる大部屋もあればいいな。」
「「「・・・・・・・・・・・・はぁ。」」」

俺もキャスケットもペンギンも、新しい船の夢にふけっては溜め息をつく、を繰り返した。
なんでもいいからとりあえず金になりそうな宝が欲しいところだ。(もしくは首に賞金がかかった海賊。)・・・すぐにその金が浪費家のローの手によって消えてしまうのは目に見えているけど。
でもまぁ最悪、グラウンドライン入りする前に買い換えればいいんだからこのままでもいいか・・・そう思ってしまうあたり、俺をふくめてこの三人はローにはとことん甘かった。
そう。ローに与えられるなら、それが何であれ、喜んで受け取ってしまうくらいには。

『結局は俺も、この二人とかわんないんだろうなぁ』

そんな言葉が頭に浮かんだけど、俺は酒を煽ってそれを打ち消した。



翌日。ローが持ってきた紙には、荒波の中にハートの模様が隠れたような、なんとも洒落たデザインだった
「すっげーカッコイイ!」と元から腕に刺青を入れていたキャスケットはこれを彫ってもらえるとのことで大喜びだった。刺青初体験のペンギンは最初は不安そうだったが、ローに手ずから与えられるものに違いはないため、無表情のまま嬉しがっていた。

「で、どこに彫るの?背中?」
「ハァ?んなのつまんねぇ。俺が好きなとこに彫るに決まってんだろ?」

それが当然と言わんばかりに答えるローはいつにも増して上機嫌だ。

「ペンギンは左胸。キャスは右腰骨の上。カゲロウは・・・そういや考えてなかったな」
「相変わらず酷いね。」
「まぁいい。お前だけ好きなとこ入れてやるよ」
「え?いいの?」

思わぬ提案に目が瞬いた。

「んー・・・じゃあおもいっきり痛いとこに彫ってほしいな」
「Mかお前は・・・」
「んにゃ?どっちかっつーと超のつくドS♪」

満面の笑みで答えると、隣にいたキャスが「ついでにドエロな。」とか言っていた。
後でセクハラしてやろう。

別に痛みに感じる性癖はない。けれど、強すぎる痛みは記憶に残りやすい。ただそれだけのことだ。
痛みに慣れた俺の体では、生ぬるい痛みなんてすぐに忘れてしまう。刺青を入れたことすらどうでもよくなってしまうだろう。
たとえそれが、俺にとって世界で唯一の存在から与えられたものでも。

「あ。」
「なんだ?」
「入れてほしいとこ思いついちゃった」
「ふぅん。どこ?」
「舌。」

だからせめて、消えない傷をつくるなら、痛くしてほしい。
痛すぎて、声も上げられないほどの痛みで、俺を貫いてほしい。

「狂ったピエロにはお似合いだな」

ローは笑った。
俺も笑う。
その笑みは帆に掲げた髑髏によく似ていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、ローさんも皆とお揃いの刺青を入れたそうです^^

実際問題、刺青を舌に彫るのは可能だそうです。
だたし痛い。めっちゃ痛い。大の男もはだしで逃げ出す痛さらしいですよ。
カゲロウは刺青入れたその後、敵にトドメを差す時に舌を出してあっかんべーしてから殺したりしてるんだと思います。見せ付ける感じで。
ハートメンバーの戦闘中話とか書きたいなぁ・・・
 
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