どこにもたどりつかない。 血に溺れる 忍者ブログ
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ペンキャス小話。キスまででちょいグロ注意?です。
開設当初のアンケートで一位になったペンキャスのために一本投下。


 


キャスケットは変わった男だ。
この船に乗っている船員のうちマトモな奴は一人としていないが(なにせ船の船長からしてああだから)、そんな中でもキャスケットは飛びぬけて変わった奴だった。
キャスケットは、どの国のどの町でもいそうな、お人よしを絵に描いたような男だ。
人懐っこい笑みに明るい声。小さい背のわりによく動き回る体は、不器用ながらも船内の仕事をこなしてまわっている。老若男女問わず好かれ、買出しでひとたび船から下りれば、買い出し分のものよりオマケで店員がつけてくれた物が多すぎて一人で四苦八苦しながら帰ってくることもしばしばだ。
まったくもって海賊には向いていない、と、人は思うのかもしれない。
だが・・・

「あれ?・・・ペンギン、いたんだ?」
「・・・・・・・・・あぁ。」

この惨状を目の前にして、はたして何人がコイツは海賊に向いていないと思えるのだろうか?




数日前に海上で襲撃をしかけてきた船が、偶然にも俺達と同じ島にたどり着いたらしいと知らせを聞いたのは今朝のことだった。
襲撃といってもこちらの被害は二・三度砲弾に被弾した程度で、船の損傷自体はあまりなく、行き着いた島に物資の豊富な港町があったため数日あれば出航できるだろうと言われていた。
だが敵船はそうはいかなかったはずだ。こちらが被弾した数の数倍。うち2発は主柱と船尾にあたっている。その上、船同士が接近する暇もなく嵐がきたため、決着はつかずじまいでいたのだ。
まず助からないだろうと思っていたのだが、意外にしぶとかったようだ。
『どうする?』
報告を静かに聞いていた船長は、既に相手に興味を失っているのか、ソファに寝そべりながら『そうだなぁ・・・』とどうでもよさげに呟くと、ただ一言。俺達に命令を下した。

『潰せ』と。

一気に騒がしくなる船内。久々の戦闘許可に歓喜の声を上げる者すらいた。
そんな中、キャスケットはただ一人、静かに佇んでいた。
帽子のつばに触れ、深く被りなおし、真一文字に口を結ぶ。
他者から見れば、来る戦闘に脅える体を叱咤しているように見えるその姿勢。
だが、影の落ちた目元のサングラスに阻まれた先の瞳は、ここにいる船員達の誰よりもギラギラと輝いているのを、俺は知っている。
ふと、自分の隣から押し殺したようなカゲロウの笑い声が聞こえた。

「・・・なにを笑っている?」
「いーや別に?何にもないよ。何もね。」
「・・・明朝には攻撃に移る。今夜中に敵の動向を調べろ」
「了解。」
「それと・・・」
「?」
「・・・キャスケットも同行させろ。そろそろあいつも船内以外の仕事も覚えるべきだ。」
「仕事、ね・・・ま、俺は構わないよ。キャスのこと気に入ってるしね」

本人はどうか知らないけど、と楽しそうに笑いながら、カゲロウはキャスケットの手を取って船の広間を後にした。




「俺は・・・お前にカゲロウと偵察任務に出ろと言ったはずだが?」
「うん。そうだった。」

キャスケットは船の縁に座り、獲物のナイフを手元で回転させて遊んでいた。
通常のナイフとは違う刃の形状をしたソレは、誰が見ても殺人以外の用途に使おうとは思わないだろう。それほどまでに禍々しく、妖しい光を放っていた。
夜に染まる海を眺めるように外に身体を向けているキャスケットの背に、静かに言葉をかける。

「・・・聞くが、偵察というものの意味は分かってるか?」
「一応知ってる。」

パシ、パシリ、パシ、パシ・・・
縁の上に置かれたサングラスに、てらてらとした液体が付いている。だがそれも本来の色をなくし、黒く乾いてしまっている。

「なら、その格好の理由を教えてくれないか?」

パシリ、パシリ、パシ・・
キャスケットの手が止まった。そして、淡々とした声で

「全部殺してきたから。」

と、普段の笑顔とはほど遠い冷たい目を、手元で鈍く光る刃に向けていた。
血を拭き取った後であろう、その刃とは違い、キャスケットのツナギは敵の返り血と思しきもので赤く染まっている。背中に背負ったドクロが血を浴び、不敵に笑う。

「あいつら、船長を狙ってたんだ。」
「・・・・・・・・・。」
「船長のこと何も知らないくせに・・・好き勝手言いやがって。ムカつく」
「・・・・・・・・・。」
「オマケに生け捕りにしてハメ殺しにしてから首を海軍に差し出してやる、なんて笑ってたんだぜ?キモチワルイだろ?」
「だから殺したと?」
「うん。・・・殺す覚悟があるってことは、死ぬ覚悟だってあるはずでしょ?だったら今殺しちゃってもいいかなーって。」

そう言って、キャスケットはツナギの前を寛げると、中に装着していた皮製の鞘へとナイフを納めた。
そして再び、何事もなかったかのように前を閉めると、キャスケットは座っていた縁の上から甲板に降り立ち、いつものように明るい笑みを向けた。

「皆の楽しみとったのは悪かったよ。船に帰ったらちゃんと謝るからさ!」

だから許して?と、甘えるように言ったキャスケットに溜め息が出た。

「一人で勝手に行動するなと言ってるだろう?・・・毎度毎度、勢いで行動するな。」
「それって俺の心配してくれてるわけ?」
「違う。思わぬところで地獄に突き落とされるバカ共が哀れでならないだけだ。」

キャスケットは新しい島に着く度にふらりと一人で出かけ、トラファルガー・ローの首を狙う賞金稼ぎや海賊を場所を厭わず始末してしまう。
しかも殺したら殺しっぱなしだ。後処理や隠蔽工作をする俺の身になってもらいたい。
余計な揉め事は海軍との戦闘を増やすことにも繋がるし、何より血まみれの服で平然と町を歩き回るキャスケットは悪目立ちがすぎる。最近の悩みの種だ。

「ふぅん?ペンギンは俺より地面とキスする死体の方が好きなんだ?」
「生憎だが、そんなアブノーマルな趣味を持った覚えはない」
「じゃあ俺のこと好き?」
「・・・さぁな。」
「冷てぇの」

すっと近づいてきたキャスは血で濡れたままの口元を俺のそれにも押し当てた。

「俺はこんなに好きなのに」

唇に濡れた感触が残った。
キャスケットは口紅でも引くように、俺の唇についた血を親指ですっと塗り広げる。
満足そうに笑うキャスケットは血の匂いに陶酔しきっているようだった。

「調子に乗るな。」

そう言って、唇に広がる血を舐め取り、触れていた指先に噛み付く。
微かについた歯形を癒すように舐めれば、ぴくりと指先が振るえたのを感じた。

「っ・・・そういうペンギンも、結構ノリ気じゃん。」
「先に仕掛けたのはお前だ。」

キャスケットの細い手首を掴み、腰を引き寄せる。

「そうだっけ?」

とぼけたフリをするキャスケットの唇を今度こそ塞いでやった。
息を奪い合うような激しいキスに、俺もキャスケットも息が上がる。
ふと、吸い込む空気に血の匂いがまじっているのを感じた。
よろめくキャスケットの足元で血溜りがぴしゃりと音をたてたが、「もっと・・・」とせがむような甘い声に消されてしまった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
書いているうちにどんどんキャスが変な奴に(笑)

『理解できない』の続きっぽく書いてますが、単品で読める仕様です。
あれ?設定ちがくね?とかそんなことキニシナイ( ゚3゚ )
ウチのキャスは精神年齢ちょい高め?なので、ペンはキャス相手だと大人の恋愛っぽくなっちゃいます^^;キラペンだとあんななのにね!(笑)
 
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