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LOVE maniacs!のナカノさんよりいただきました。
素敵なキラペン小説です!



「なぁ、キラー屋?頼みがあんだけど」

キッド海賊団の船では、シャボンディ諸島についてから何度目かの宴会が開かれていた。
そこに招かれているのは、ハートの海賊団の船長であるローと、その右腕のペンギン。
本来ならばありえないことだが、ここは船長同士が恋仲であり、本人達もそれを隠そうともしない。
その上、意外と人懐こい性格のローはキッド海賊団の面々ともすっかり打ち解けてしまったから特別だ。

それでも、酒の席ではいつ何時トラブルが起こらないとも限らない。
そう警戒してくっついてきたのがペンギンだった。
当然ながらその心配は無用なもので、キッドとローの幸せそうな様子と、周りの船員の気さくな態度に
警戒心もとけたペンギンは先程からリラックスして恋人であるキラーの隣に居た。
キラーはそんなペンギンと酒が飲めるのが嬉しくて、ついついいつもよりペースが早くなる。

この辺でやめておかないと、明日起きれなくなるかも。
何より、上機嫌なペンギンと一緒にいられる貴重な時間を酔って台無しにしてしまうのは勿体無い。
周りを見渡せば所々に酔いつぶれた者も出始めており、そろそろお開きにした方がいいだろうか――

そう考えた時だった。ローがキラーの隣に来て、にこりと笑ってそう言ったのは。

「なんだ?」
「おれ、今日ユースタス屋の部屋に泊まりたいから、適当にペンギンの相手して?」

――潰しちゃってもイイから。
ローはキラーにそう耳打ちすると、キッドの方へと戻っていった。

突然の依頼に驚いたキラーがその後姿を思わず目で追うと、
ローは当然のようにキッドの隣にくっついて座り、甘えるようにもたれかかって
黒く塗られた爪の大きな手からグラスを奪って酒に口をつける。
普段はそんなことを許さない筈のキッドは、相手がローであるというだけで穏やかな笑顔でそれを受け入れた。

ふたりをつつむ空気は離れていても伝わってくるほど甘やかなもので、
キラーはそれを単純に”羨ましい”と思ってしまった。
ペンギンが、あんな風に甘えてくれたことなど一度もなかったから。

真面目でお堅い副船長の彼が自分を受け入れてくれただけでも奇跡であり、それだけで幸せ。
そう思おうとしても、やはりあのような雰囲気を全く望んでいないと言ったら嘘になる。
そういえば先程トラファルガーが言った、適当にペンギンの相手して、って…どういうことだろうか。
いっそ、酒の勢いでもいいから甘えてくれるなら、喜んで潰しに掛かるのに。

「キラー、今、うちの船長は何て?」
「いや、…キッドの好きな酒を聞かれただけだ」
「…?」

右隣に座っていたペンギンが不意にそう聞くものだから、キラーは努めて冷静を装ってそう答えた。
自分の恋人であるこの男は、本当に勘が鋭い。
一瞬ひやりとしたが、それ以上深く追求してこないのを不思議に思ったキラーは
ペンギンの顔をもういちど、今度はゆっくりと観察する。

思ったとおり、ペンギンは酔っていた。
ほんのりと上気した頬は、行為の最中のそれを思い出させる。
キラーは、途端に湧き上がる欲を慌てて頭の片隅に追いやった。

「それより、おまえ今日は体調悪いのか?顔が赤い」
「ああ、いや、…少し飲み過ぎてしまったみたいだ」

火照った顔を少し俯かせて、情けないな、と零すペンギンが可愛らしい。
しかし、これを口に出すと彼は”副船長としてこうあるべき自分”という姿に戻ってしまうのをキラーは知っている。
折角酒のせいで普段見れないような表情が見れているのをみすみす逃すような真似はできないので黙っていたが、
それでも、少しだけ笑顔になってしまうのは我慢できなかった。

「……何笑ってるんだ」
「笑ってないよ、楽しいだけだ。うちの船の宴会も、たまにはいいだろ?」
「…ん。でも」
「どうした?」
「何でも、な……」

――おいおいトラファルガー、まさか何か盛ったのか?
いつもと違いすぎるペンギンの様子に焦ってローを見るキラーの目線の先には、
相変わらずキッドに甘えたように寄り添うローが、こちらをちらりと見て意味ありげに笑っている。
その間にもペンギンの瞼はどんどんと下がり、今にも寝てしまいそうな様子だ。

「ペンギン、ちょっと待て、寝るならベッドを貸すから」
「いや、だいじょうぶ だ。船まで、帰れる…」
「無理するな。ほら」

先に席を立ち、自分の腕を緩く引っ張るキラーの優しい声に導かれるように、
ペンギンはふらつく足で立ち上がると彼の後について宴会場となっていたダイニングを抜ける。
甲板に出たキラーは、ペンギンのペースにあわせてゆっくりと歩いた。
差し出した腕に申し訳なさそうに掴まるペンギンの重みが、ただ愛しい。



結局、ふたりがキラーの船室に辿り着くには普段の倍以上の時間がかかってしまい、
ペンギンが酔いきっているのは明白だった。
その様子に、多少強引にでも引き止めて正解だったな、とキラーはひとり胸を撫で下ろす。

キラーは、申し訳ないからソファでいい、とこの期に及んで遠慮するペンギンを
ベッドに半ば無理矢理座らせると、水の入ったグラスを差し出して自身も端へと座る。
それをゆっくりと飲んだペンギンは、キラーに再度促されてようやく寝転がった。

そのまま、ゆったりと静かな時間が過ぎてゆく。

「あの、…すまない。こんなに酔うのは久しぶりだ」
「いいから、もう休め」

ぽつりと、申し訳なさそうに詫びるペンギンの髪をそっと撫でる。
暫くそれを大人しく受け入れていたペンギンは、意を決したようにむくりと起き上がると
何事かと驚くキラーの膝に頭を乗せて再び寝転んだ。

「ぺ、んぎん?」
「……な」
「……」
「なんとなく 甘えたくなっただけ だ」

普段では考えられないようなペンギンの行動に、キラーが固まっていると
あたたかな手のひらが頬に添えられる。

「キラー、ありがとう。…おまえは、優しいな」

ちいさな声で礼を言われて、我慢できなくなったキラーはペンギンの手をとるとそっとそれに口付けた。
そのまま、ペンギンを抱き起こして、今度は額に。拒否されないことを確認して、頬へも。
照れたように俯いていた目線が合ったので、好きだよ、という代わりに唇を塞いだ。

普段はこうやってキスをするたびに、きゅっと瞼を閉じてしまうから見ることのできない瞳が、
うっすらと涙を湛えてキラーを見つめる。その目線は、気のせいかほんのりと熱を孕んでいた。
キラーが思わずその漆黒に見惚れていると、ペンギンの唇がゆっくりと、でも確実に恋人の名を紡ぐ。

それを合図に、二度、三度と繰り返されるとろけるようなくちづけ。
啄むような優しい感覚のそれは、ふたりを包む空気を甘いものへと変えてゆく。

――キッドとローを包む、甘やかな雰囲気。
それを羨ましく思っていたのは、キラーだけではなかったのだ。

上手な甘え方なんて知らないから、
いつもと違う、自分からねだるキスも寄り添う体温も、あまえるように名を呼ぶ声も。
すべてを酒のせいにして。

『なぁキラー、たまにはこうやって、甘えてもいいだろう?』






END


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
素敵なキラペン小説をありがとうございました!家宝にします!www
上手く甘え方を知らないペンギンが勇気を振り絞る姿が微笑ましいです(*´∀`*)そして驚きすぎて固まっているキラーが可愛くて・・・!!もうリアルにパソコンの前で身悶えましたよ!(笑)
ナッツリさんありがとう^^

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