どこにもたどりつかない。 チョコレート 忍者ブログ
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世間の流れにのっかってチョコレートネタを投下です。短いです。
キャスロキャス風味。
しかしこの二人は私が書くと百合ップルにしか見えなくなりそうだww




俺の故郷には、好きな人にチョコレートを贈る日というものがあった。
それがどういった理由で存在しているのかは知らないけど、とにかくそういう日だと教わった。
相手に伝えたい気持ちを物として贈る日なのだと。
それはなにも意中の相手だけではなく、家族にでも仲間にでもかまわない。仲良くなりたい人でもよかった。自分の気持ちを物に込めて贈るという行為に意味があるらしい。
これを教えてくれた人は、俺に小さなチョコレートをくれた。キャンディのように包まれた小さなものだったけれど、飛び跳ねて喜んだものだ。

・・・だからだろうか。
だからこんなにも混乱してしまうんだろうか?

「なんだ?いらないのか?」
「は、はいっ!いただきます!」



さかのぼること一時間前。船をつけた町に実験用の器具を購入できる店があると聞いた船長は、ペンギンがいないのをいいことに一人で出かけようとしていた。
それを偶然発見した俺は、船長の護衛兼荷物持ちとして同行した。
船長は知らないだろうけど、ペンギンは船員に「船長を一人で町に行かせるな」と、言って聞かせている。もし一人でいた場合はペンギンに即座に報告するようにも言われていたけれど、もしかしたら船長と二人っきりになれるかもしれないという思いに押されてしまった訳だ。
船長は「必要ない」「一人でいい」としきりに言っていたけれど、店についてからは商品に夢中で何も言わなくなってしまった。
二人っきりといえば二人っきりだけど、おもいっきり存在忘れられてるなこれは。と少し残念に思ったけど、珍しく幸せそうな笑みを浮かべる船長が見れただけでも十分だった。

そしてその帰りのこと。
「用も済んだし帰りましょうね」と言う俺に渋々うなずいてくれた船長と一緒に船へと帰っていく途中、どこからかざわめき声が聞こえてきた。両手いっぱいに抱えた荷物の隙間から目を向けると、公園の真ん中で移動販売の車が止まっていた。
車の絵柄からして、アメやクッキーといった菓子類を販売する店らしい。その周囲は商品を求める子供や若い女の子でにぎわっている。

「なんだキャス。欲しいのか?」

立ち止まっていた俺に、船長が首をかしげた。

「へっ!?あ、いや、別に・・・」

この歳になって甘いものを強請るなんてみっともないことはできない。
俺は思いを振り切るように頭を振り、「さ!行きましょう!」と歩き出すと、船長はあろうことか、公園の中へと消えていった。

「えっ!?ちょ、船長!!?」

慌ててUターンして後を追うと、人がだんだんまばらになってきた店に向かっていく船長がいた。

「はい。いらっしゃいませ!」

幸い、店主は船長のことを海賊だと知らなかったようで、にこやかに対応している。

「お前、どれがいい?」
「へ?」
「好きなの買ってやる。それで今回はチャラな」
「それって・・・」

つまり、ペンギンに黙って船長を行かせたことの礼ということだろうか?

「え、でも俺・・・」
「あと3秒で言わねぇとこの店バラバラにするぞ。」
「い゛!?」
「はいいーち、にーい・・・」
「え、えぇっと・・・これ!これがいいです!!」

急に物騒なことを言い出す船長に焦り、俺は急いで自分の一番好きなものを指差した。

それが、この店で一番安かったチョコレートの詰め合わせだった。
色とりどりの銀紙で包まれた星やハート型のチョコを袋につめ、リボンでラッピングされたものは、誰が見たって男が好んで買うものじゃないだろう。
『こ、これは恥ずかしい・・・!』
恥ずかしさに思わず顔を伏せていると、船長が「なんだ?いらないのか?」と首をかしげた。せっかく買ってやったのに、と不機嫌さすら滲ませる表情に思わず受け取ってしまったのだが、改めてその品を見た瞬間に、冒頭の昔話を思い出してしまった訳だ。

特別な日でもなければ、多分なんとも思われていないだろうし、伝えたい言葉も思いもないんだろうけれど・・・でも、“もしかしたら”という考えが浮かんでしまう。
勿論、好きになって欲しいなんてそんな高望みはしないけれど・・・

「あの、船長!」
「ん?」

再び帰路へとつく船長の背に言葉をかける。

「俺、その・・・船長に一生ついていきますね!」

せめて、船長が見つめる海の先へと、共に向かって行きたいんです。

「菓子1つでオーバーだな。」

振り返った船長は呆れて溜め息をついてたけど、少し笑ってくれた。
もうそれだけで、俺は十分幸せな気持ちになった。
一つの言葉を貰うより、いくつもチョコを貰うより、その笑顔一つで、俺は幸せになれた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バレンタインが近いということで、チョコレートの話を一つ。
ローから貰ってドキドキするキャスを書きたかったんですが、なんだかなー・・・微妙な文になってしまいました。現代パロとかでまたリベンジします。
 
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